風ふくまで

いつもクルマのことばかり考えています

いすゞのこと知ってますか?

最近いすゞの自動車博物館が湘南藤沢にできたと言うので行ってみた。
いすゞなんて国内では乗用車部門から手を引いてから久しいので、何を今更作ったのか、とからかいに行くつもりだったが、外観がクリーンな印象で驚かされた。
自動車博物館系で例えるならばシュツットガルトのポルシェセンターのような見た目。





自動車博物館と言えばクラシックカーの展示がメインだが、いすゞの博物館は子ども向けのコンテンツが充実している。
その一つが巨大なジオラマ
建物やインフラ、人物すべてが丁寧に作られているだけでなく、一部はカラクリ人形のように動くのだ!子どもは動くまで釘付けになり、1時間程度ここで時間を費やす子もいるのではないかとさえ思う。




続いて驚いたのは、トラックの納品体験。
様々な職業から1つ選び、その人の要望に最適なトラックを納品するというもの。
僕はコンビニ店長から配送に適した車両を依頼されたが、小型、冷蔵対応と選んでいってもまだ更に選択肢が3,4種類残っていて困った。
適当に選ぶと店長にちょっと違うと断られる始末。
これはなかなか難しい。


ようやくトラックを選んだ末、ボディカラーを決める段階になったが、色がほぼ無限に選べるのが感動的。
普通、この手の色選択は4,5色から選べればいいものを、いすゞの作りこみは凄い。


その後、前面の地図に自分が納品したトラックが投影される。
これも子どもにはうれしいし、作品と一緒に撮影するタイミングも用意されている。
しかも作者とトラックを入れても正方形に収まるようになっており、インスタを意識していることがわかる。




続いて、塗装体験。
ジョイスティックのようなものを握り、トラックに向けてノズルを引くと、ボディに色が塗られる。
ジョイスティックの先にセンサーが付いており、頭上に設置されたセンサーと併せて空間認識を行い、ボディの照射部分に色が付く仕組みのようだ。
ちょっとした遊具なのに、この手の込みよう。
しかも、同じ場所に照射し続けると塗料が垂れる。
感動だ。




整備体験もできる。
画面上に指示された点検内容を実車を使って現物確認し、異常がないかどうかを回答するもの。
僕が試した時は、ヘッドライトの点検が問題で、向かって右側が消えていることを指摘すれば正解。
これもディスプレイと車両の電源とを繋いでプログラムする必要があるので、意外と面倒な仕掛けだと思う。




こちらは4サイクルエンジンの仕組みを学ぶゲーム。
各サイクルを順番に経て初めてクルマの推進力が生み出されることをゲームを通して学べる。
ゲーム内容としてはビートマニア太鼓の達人のような感じで、各サイクルに差し掛かった時にタイミングよく光ったボタンを押せば良いというもの。
これは相当難易度が高く、ゲームとして楽しめる子どもは少ないのではないかと思った。

僕がマジでやってみたところ、この日の記録を約30秒以上上回る最高記録が出た。それでもまだ更に30秒程度短縮できそうな余地があった。




さて、クラシックカーゾーンも見てみる。
入館前の想像では、創世期のバス、エルフ、ベレット、117、ピアッツァ、くらいが並んでいるのではないかと思ったが、蓋を開けてみると、エルフと117は合ってたが、ベレル、LUVジェミニ、というラインナップであった。
ん?LUV?と思った人は僕だけではあるまい。
そんなクルマ、耳に覚えがない。
説明を読んでみると、ファスターのシボレー版OEMだと書いてある。
ファスター自体が今やマイナーだ。
しかも何故シボレー版が飾ってあるのかが最大の謎である。




隣にジェミニ4ドアがいたが、それよりも当時のカタログに目がいった。
GMホールデン等のジェミニのOEM4兄弟が並んで紹介されているカタログである。
以前から思っていたことだが、ジェミニはそうでもないのにオペルOEMのカデットはどうして垢抜けてかっこよく見えるのだろう。
答えは簡単、横にいたおっちゃんが、"カデットには2ドアHTがあったからね"と。
なるほど、ジェミニは2ドアクーペ、4ドアセダンしかなくて、カデットには。。。
そのときは合点がいったが、後でよくよく考えてみるとジェミニフェンダーミラーだからダサく見えるのではないかと思った。




以上、いすゞの博物館を見たわけだが、僕の中では満点だ。
いすゞ自動車と言えば、今や完全にトラック・バスのメーカであるため、親しみをもってブランドを感じる人は少なくなっているはずだ。
そんな中、ここまで一般市民向けに投資をして面白い施設を作ってくるバイタリティはどこから生まれてくるのか。
それは日本のモノづくりに対するいすゞ自動車の技師たちの危機感の表れなのかもしれない。
日本国内で馴染みが薄くなってきたからこそ、若い担い手を獲得するのに必死なのであり、子どものうちからクルマ作りの愉しさを感じてもらう仕組みづくりに力を入れているということなのだろう。
と、僕は勝手にそう解釈した。